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김지용 “어쩌다 정신과 의사”

  • 執筆者の写真: 清水碧
    清水碧
  • 2021年12月16日
  • 読了時間: 5分

更新日:2022年11月3日

今日は韓国の精神科医である김지용先生の著書 “어쩌다 정신과 의사”の紹介と感想を書きます。ぜひ日本語版が出てほしいと願っている本です。この記事では、本を読みながら私がいいなと思った部分をあげていきます。


この本は300ページ以上ある長い本なのですが、専門書ではなくエッセイで、かつ多くのチャプターに分かれており、内容も文体も分かりやすいです。

本は5つの章から成っていますが、内容としては、著者がどのようにして精神科医になったかという著者自身の話、次に精神疾患やさらに広く人の心理について、精神科医としての視点や経験から書いた話、そして著者が精神疾患への偏見をなくすために行っている活動、“뇌부자들”の話という3つについて書かれています。


それでは印象的だったエピソードを順番にあげていきます。


1장 어쩌다 정신과 의사


“객관식 세계에서 만난 주관식 나라”


ここでは元々考古学者になりたかった著者がどのようにして精神科医になったか、そして後に気づいた考古学者と精神科医の共通点について書いてあります。著者の学生時代の話が書かれているのですが、今ではこんなにすごい先生でもいろいろな時期があったんだなとなんだかほっとしました。


“정신과 의사의 고통 배틀”


私がこの本の中で印象的だったエピソードの1、2位に入るのがこの“고통 배틀”の話です。自分は相手よりもっと大変な思いをしている、あの人は自分のような辛いを経験をしているはずがない、そういう「苦痛バトル」には意味がないというお話です。

同じ経験をしてもそれをどう感じる、それがその人の人生にどう影響するかは人によって違うと頭では分かっていても、現実にはついこのように思ってしまうことがありますね。。


2장 멀고도 가까운, 나의 환자들


“나만 부족해보일 때”


精神科医は自身についてあまり語らないのが良しとされてきましたが、それが精神科への敷居を高くしてきたと考えた著者が、“뇌부자들”の活動を通して少しずつ自分たちの足りない部分、人間らしい部分を出すようにしてきたというお話が出てきます。

私も韓国語教師として活動する際に似たことを考えることがあります。教師としての威厳(というと大げさですが...)を保っていた方が良いのかな思いつつ、私自身も常に勉強しながらやっているということを生徒さんに知ってもらい、親近感を持ってほしいという思いがあります。その2つのバランスを上手くとっていきたいと常々思っているので、共感しました。


3장 상처받은 그 자리에서 다시 시작하기


“스스로의 생각보다 강한 당신”


考えてみれば、診察室にやってくる人たちというのは、初めて会う人に自分の最も深い話や誰にも話したことのない辛い話をしに来ている。だからその時点で、その人たちは十分に勇気があって強い人たちなのだというお話です。言われてみればそうだけど、このように言ってくれる人はあまりいないので、勇気づけられました。


“때로는 필요한 상처”


「その大変な出来事があったからこそ今の自分がある」ということばをよく耳にしますが、1章の“고통 배틀”の話にもあったように、辛い経験をしてもどのように感じるかは人によって異なります。このエピソードで新鮮だったのが、著者自身が患者と似た辛い経験を過去にしている場合に、どのように感じ、どのように対応するかについて書いてあったことです。精神科の先生の視点からこのように書いた文章を初めて読んだので、印象的でした。

4장 완벽하진 않아도 충분히 좋은


“왜 우리는 지금 여기에 머무르지 못할까”


こちらのエピソードもこの本の中で1、2位に入る印象的なエピソードでした。よく「過去は変えられないけれど、現在と未来は変えられる」ということばを耳にしますね。ただ、この本以外でも“뇌부자들”のPodcastなどを聞いていて知ったのですが、精神科では"지금 여기"を大切にするそうです。これは、過去のことは変えられない、そして未来のことも分からない、それらを不安に思って今この瞬間の大切なことを見失ってしまうのではなく、現在を大切にするということだそうです。

この(過去はもちろん)未来ではなく、現在に集中するというお話が印象的でした。これは決して先のことは何も考えずに行動するということを意味するのではなく、今この場で考えてもどうにもならないことを心配して目の前の大切な瞬間を逃すのではなく、今に集中するということです。

このチャプターでは"지금 여기"の重要性を著者が旅行を通して実感したエピソードが出てくるのですが、その理由が納得できて面白かったです。


5장 나는 매일 편견과 싸운다


“잘 모르는 사람들의 무책임한 말들”


この本の一番最後のエピソードになります。ここでは、精神疾患は意志の問題であると誤解されがちであるが、そうではなく、他の様々な病気がそれぞれ身体の部位の異常により生じるように、精神疾患も脳に異常をきたしたために生じる疾患であるとはっきりと述べられています。

このエピソード以外でもこの本全体、特に5章では、精神疾患は脳の異常により生じた疾患であるため、他の身体の病気と同じで薬によって症状が良くなるということが科学的な事実に基づいて書かれています。

私の足りないことばでこのエピソードを全て上手く伝えることができないのでこのくらいに留めますが、このエピソードだけ読んでも精神疾患及びそれを取り巻く状況についてよく理解でき、かつそれについて著者がどう思っていて、なぜ“뇌부자들”の活動をしているのかが分かります。


以上が私がこの本の中で特に印象に残ったエピソードの紹介でした。

この本は、김지용先生ご自身についてのお話も、先生が考えていることについても、精神科の実態についても、淡々と、でも面白く、分かりやすく書いてあります。

私にとってはこれまで読んできた本の中で、言語を問わず、とても大事な1冊となりました。ですので、韓国語で読んでみることが可能な方にはぜひ読んでいただきたいですし、日本語訳されていろいろな人が読める本になってほしいなあと思っています。



参考文献

김지용 지음, 《어쩌다 정신과 의사》, 심심, 2020.


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