過去とつながりのある出来事を強調する“그렇게”の用法について
- 清水碧
- 2022年5月24日
- 読了時間: 4分
今日は韓国語を観察していて気づいた「過去とつながりのある出来事を強調する“그렇게”の用法」について書きます。
論文のテーマのようですが...実際、私が研究をしていたとしたら研究テーマとして興味深く観察していたかもしれません。ですが私はおそらくもう研究はしないので、ブログ記事という形で残すことにしました。
論文ではないので用例が少ないですし、結論としてこの“그렇게”がどのような用法であるか論証するところまではできませんが、自分なりに観察してこうなのかなと思ったことを書いてみます。
いろいろと述べていても分かりにくいので、この辺りで私が扱おうとしている“그렇게”の具体例あげます。具体例としてあげる用例(1)は私の作例で、ネイティブチェックしてもらったものです。(1)の下線部分がこのブログで見ていきたいと思っている“그렇게”です。
(1) 그 집에서 자주 사 먹던 붕어빵이 그렇게 맛있더라.
(あのお店でよく買って食べていたたい焼きがほんとに美味しかったんだよね。)
この“그렇게”は“그렇게 하면 돼요.”における“그렇게”のように何かを指し示しているわけではなく“너무”, “아주”あるいは“정말”, “진짜”のように、後ろにくる形容詞を強調する場合に用いられます。(1)の場合は“맛있다”を強調しています。
例をもう1つ見てみます。こちらも作例をネイティブチェックしてもらったものです。
(2) 난 저녁에 산책하는 게 그렇게 좋더라.
(私は夕方に散歩するのがほんとに好きなんだよね。)
この“그렇게”も何かを指し示しているわけではなく“좋다”を強調する意味で用いられています。
(1), (2)とも文末が“-더라”になっていますが、観察していると、この“그렇게”の用法は“-더-”と共起する場合が多く、過去と何かしらつながりがある出来事を強調する場合に用いられるようです。
過去とつながりのある出来事を強調するとは言っても、用例をよく見てみると(1)と(2)は共通点と異なる点があることが分かります。
まず共通点は、どちらとも単発の出来事ではなく一定期間に繰り返し行われてきた出来事に対する話し手の心情を強調している点です。
したがって(1)では、一度買った“붕어빵”が美味しかったということではなく、一定期間に何度も買っていた“붕어빵”が美味しかった場合に用いられています。
(2)においても、過去のある時点から現在まで繰り返し行われている“산책”が好きであることが強調されています。
次に(1), (2)の異なる点は、(1)は過去に繰り返して行われていた出来事が完結しているのに対し、(2)は過去から現在までその行為が続いています。
この“그렇게”の用法ですが、私は韓国のラジオを聞いていて多用されていることに気づきました。この用法はラジオを聞いているとかなりの頻度で現れる一方で、ドラマや映画の脚本や本にはほとんど現れません。
このことから、自然に発せられたことばには現れても、文章を創作する際には登場させない傾向にあるのかもしれません。このような事情があり、文字化された用例を見つけることが難しかったのですが、今回本の中で珍しく用例を見つけたのでブログ記事にすることにしました。
本の中から見つけた用例は次のものになります。김하나《힘 빼기의 기술 -카피라이터 김하나의 유연한 일상- 》の中の“내 인생의 첫 고양이”という章から引用しています。日本語訳は私が付けました。
(3) 어릴 적부터 나는 개파였다. 개를 그렇게 좋아했다. 초등학생 시절 나는 집에 있는 백과사전의 ‘개’ 항목에 있는 사진들을 보고 또 보며 개의 종류를 모조리 외웠다.
(幼い頃から私は犬派だった。犬がほんとに好きだった。小学生時代、私は家にある百科事典の「犬」の項目にある写真を見て、また見ながら、犬の種類を全て覚えた。)
(3) では、過去の一定の期間において犬がずっと好きであったことが“그렇게”によって強調されています。ここでは引用していませんが、本では(3)より後の文脈で、話し手は現在は猫がとても好きで猫を飼っている話が出てきます。このことから、(3)は過去に完結した出来事に対する話者の心情を強調している点で、(2)より(1)に近いと言えるでしょう。
(1)~(3)を通して見てきた“그렇게”について、上で指示詞の用法として用いられているわけではないと述べましたが、韓国語では過去の出来事を指す場合に“그”系列の指示詞が用いられることを考慮すると、指示詞の用法と完全に関係がないわけではないとも推察しています。。
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以上が私が“그렇게”を観察していて推測したことになります。結論というのは特になく、私が観察していて思ったことをつらつらと書いていったところでこのブログは終わりますが、このような“그렇게”の用法は文字化されない自然な発話では非常によく用いられています。
文字化されたものであっても、口語体がよく用いられるinstagramなどでは現れるようで、本ブログで扱っている“그렇게”の用法の中で度々用いられる“그렇게 좋더라” という形のタグである#그렇게좋더라をinstagaramで検索すると2022年5月24日時点で226件あります。
“그렇게좋더라”のタグのみでこの数があるため、“좋다” を他の形容詞にしたり“-더라” ではなく他の語尾に変えて検索するとさらに用例は現れると思います。
参考文献
김하다 지음, 《힘 빼기의 기술-카피라이터 김하나의 유연한 일상- 》, 사공사, 2017
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